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コミュニケーション能力という曖昧な能力はいらねぇ~
今回は、今働いているクレカの運用・保守部隊に数か月前に入ってきた若僧の、「コミュニケーション能力が一番大事ッスね~」のコメントにちょっと”モノ申す”記事だ。ひょっとしたら全て愚痴に聞こえるかもしれないが、ちょっと面白かったので記事にした。
1.訳知り顔の知ったかブッチ~
今回の主役の”訳知り顔の知ったかブッチ~”(以後、ブッチ~)がこの現場にやってきたのは4月の頭、新年度の開始のタイミングだった。29歳。JAVAとPHPで一応、プログラマやSEとしての経験は多少あるみたいだが、どうしてこの運用保守部隊にやってきたのかは不明。
面白かったのは、人見知りというのが全くなかったことだ。初対面の人でも何の抵抗もなく話しかけることができる稀有な人物だ。お客さん側の結構偉い人に電話で何の緊張感もなく話す彼の姿を見て、周りが緊張しまくっていた。まぁ、この現場では、無口ではやっていけないので、みんな大目に見ていたのだが・・・
2.一番大事はコミュニケーション能力
このブッチ~が一番よく使っていた言葉が「仕事で一番重要なのはコミュニケーション能力でしょ~」だった。まぁこっちは、彼の言わんとするところは分からなかったので無視していたいのだが、この後”コミュニケーション不足の欠如”から大惨事が発生してしまうのだが、この時はまだ誰も知る由もない。
前兆らしい前兆は、うっすらとだが存在した。それは、彼が仕事をする際に、現場で使用しているマニュアルや作業手順などの関連資料の読み込みをほとんどやっていなかったからだ。ただ、わからないときはすぐ質問してきていたので、あまり気にも留めていなかったのだが、今振り返るとそんな気がする。
3.予定していた作業
大惨事は定期リリース当日に発生した。
簡単に状況を説明する。まず5/5(土)23:00に月次のリリースが予定されていた。リリースには大きく分けて2つ存在して、
・緊急リリース:障害対応に伴うプログラムの緊急リリース
・定期リリース:仕変対応に伴うプログラムの緊急リリース
今回は下の”定期リリース”だ。そしてリリースに際し、数日前から当日にかけて運用保守部隊では以下のことを行う。
①.事前告知・・・エンドユーザ向けにサービス停止の案内と時間帯をNews欄に投稿する。
②.リリース手順書の作成
③.リリース時作業
・メンテナンス画面への切替(サービスOn➡Offへの切替)
・関係者への進捗報告(リリース状況)
・メンテナンス画面への切替(サービスOff➡Onへの切替)
③.事後報告・・・エンドユーザ向けにサービス再開をNews欄に投稿する。
4.やらかしやがった
そして事件は発生する。もうまもなく日勤業務が終了かっていう20時頃だった。みんなリリース手順書の見直しや、引き継ぎの為の準備をしている最中だった。もう夜勤の人たち頑張ってね♪みたいなまったりとした空気間の時に発生した。なんと、ブッチーが、リリース作業前の20:00頃、メンテナンス画面に切り替えやがった。
発覚したのは、メンテナンス画面に切り替えて約1時間後、夜勤のメンバが出勤してきた時だった。
「リリースって前倒しで始まったんスか~?」
「何???、どういうこと、何で?」
「会員サイト、工事中になってますよ~」
「ええええ?」
原因はすぐわかった。
メンテナンス画面の切替の時間を20時に間違えたためだった。システムが本番稼働された当時のルールは確かに20時が標準の開始時間だったのだが、その当時の設定集を誤って使用してしまったため、このような笑撃の大惨事が発生してしまった。
「おい、ブッチ~、班長からどんな指示を受けてたんだ?」
「この資料どおり、やっただけなんすけどね~」
「そんなこと言ってねぇ~」
「最新の手順書ってここじゃないんすか?」
「まぁいい、早く画面を戻してくれ~」
・・・
すぐに、画面の切替を行い、サービス中に戻したのだが、コールセンターには数件、問合せが来ていた。
この惨事を受けて、リリース作業が中止されるのではという懸念があったが、結局リリース作業は予定どうり実施された。
5.惨事発生後の事後経過
この件については、重大なインシデントが2件発生している。
①.メンテナンス設定画面の切替ミス。
②.作業の一部に重大なルール違反あり。
後日、お客さんに報告した際には、特に②が重要視された。
②はつまり、メンテナンス画面の切替設定などの作業は、”実施者”と”再鑑者”の2名で実施しなければならないが、この時は、1人でやらせていたのだ。①は実施者本人の過失、②は運用保守部隊としての過失だ。
現実に人員不足という現実がある為、1人で実施、後にコッソリ、リーダが後追いで確認なんていうケースは行われていた。
でも、今回は20時過ぎまで直前のリリース関連の打ち合わせが行われておりリーダの確認ができなかった。
結局、この件以降、リリース関連作業については、大幅な変更が加えられた。
一番大きいのは、リリース当日の人員不足という根本原因を解消するため、運用保守部隊のリーダorサブリーダが出社しサポートすること。さらにルールが全メンバに浸透しているかどうか確認するためのリリース訓練を実施することとなった。
全くアホらしい。
このようなインシデントが発生すると大体、面倒くさい作業が増え、負荷が増大し、場合によってはよりインシデントのリスクが増すのだが、お客さん側は、こんなこと言っても納得しない。
泣く泣く、納得してもらえそうな対策を提示して沈静化を図るしかないのが、この業界の一般化したルールだ。
6.コミュニケーション能力の前に目の前の世界を把握しろ~(笑)
ブッチ~に対しては「おめぇが言っていたコミュニケーション能力ってなんだ?」という思いだった。インシデントを発生させた班のメンバとして自分も、事情聴取を受けた。仕事に対する取り組み方から、メンバ間の情報連携など、根掘り葉掘り聞かれた。そして、ヘロヘロになりながら作業部屋に戻ると、ブッチ~は相変わらずの積極果敢な電話攻勢野郎だった。
この後、いろいろ彼の業務知識の蓄積具合をテストすると、ぶっちゃけ平均よりはるかに低い状態であることが判明した。
二言目には「はい、わかりました」
なんて言ってたのに、実際はたいして頭に入ってなかったみたいだ。「あんな状態でなんで電話かけまくれるんだ?」なんて疑問を感じつつ、他のメンバ達にも知識の習得具合のテストが実施された。大抵は問題なかったのだが、何人かは要注意判定を受けた人間がいた。
このテストでわかったのは、大体簡単に、「分かりました!」っていう奴ほど危険だということだ。「大体わかったけど再度確認します。」っていって、資料の読み込みなどを行って、別に質問とかを挙げてくる奴なら大体大丈夫だ。ただ自分自身も古い知識のまま作業を行っているものがあったので気を付けないといけない。
7.コミュニケーション能力っていったいなんだ?
この記事の主題である”コミュニケーション能力”ってそもそもなんだろう?って今回の件が収束し落ち着いた後、再度考えてみた。自分なりに考えてみた結果としては以下のとおりだと思う。
・難解なことを別な言い回しや例えなどで分かりやすく伝える「説明力」
・正しい言葉使いができる「国語力」
・自分の思っていることを過不足なく伝えられる「説得力」
・相手の真意を理解し、自分の思いや考えを伝えられる「伝達力」
今回の件でいえば実をいうと、ブッチ~の責任はあまり大きくない。ミスはやらかしたが、ミスはだれでも犯すし、大事なのはミスが発生しづらい仕組みづくりやミスが発生した際のリカバリの仕組みがちゃんと確立されているかどうかだ。
今回の件では、内部に抱えている問題も露呈した。例えば、資料が分かりにくいものであったり、探しやすいように整理されていなかったり、電子化されていなかったりといったものだ。
組織が成熟するには、このような事件事故も必要な気はするが、あまりに費用対効果のバランスが悪すぎる。もっと自分も含めて当事者意識が必要な気がした。
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