親しい知人にたまに聞かれる、「IT土方って大変じゃないの?」という質問。多分”IT土方”っていう言葉を何かで聞いて、大変そうっていうネガティブイメージがこびりついちゃっているみたいなんだけど、個人的には快適にやっている。でもね、そもそもIT業界って興味はあるけど”よく分かんな~い”っていうのが本音だと思う。そこで今回は、自分から見た内側の実体をちょっと説明したいと思う。
あ、でもWeb系はよくわからんのでWeb系の方は、他で調べてほしい。今回はあくまでSIer系の方の説明になる。
IT業界(SIerについて)
SIerとは・・・
SIerっていうのは、”System Integrationで稼いでいる会社”でメーカー系、ユーザ系、独立系などいくつかの形態がある。
①.メーカー系
NEC、日立、富士通、Sony・・・など主にコンピュータ関連の製品製造をしている電機メーカーの系列会社の情報処理会社。もともとは本体に情報システム部があったのが独立して法人化したもの。
仕事は、本体から降りてくるものが多いが例えば、上記に挙げた電機メーカーが銀行系のシステムを開発したりなど製造するシステムは多岐にわたる。
ちなみに自分は今の現場は、上の挙げた系列の1つだが面倒を見てるのは地方銀行の顧客管理システムで、その地銀との資本関係とかは全くない。
②.ユーザ系
銀行、証券、保険などの金融系、電気、水道、ガスなどの公共系、鉄道会社などのインフラ系などメーカー系以外の大企業の系列のSIer。
こちらは、自分のイメージだと本体から降りてきた仕事をメインとしているイメージがある。(特に金融系は・・・)
③.独立系
こちらは玉石混交、上場している大手から、中小零細を含めれば無数に存在する。自分は会社員(正社員)として3社経験したが、いずれも独立系のSIerだった。一昔前はソフトハウスという呼び方をされていたが、今はあまりこの言葉は聞かなくなった。中小零細は基本的には①、②の企業に人を斡旋することが主な業務だが、まれに受託開発というギャンブルに打ってでることもある。
独立系SIerの特徴(メリット・デメリット)
現在、IT業界で働いている人で圧倒的に一番多いのは”独立系SIer”で働いている人だと思う。前項でも少し書いたが、この独立系SIerで働いている人は基本的には大手SIerに客先常駐として勤務している。自分も通算で3社、約20年程独立系SIerに在籍していたが、この内、95%くらいは客先常駐だった。少しだけ受託開発という中小零細独立系SIerにとってのギャンブルに付き合ったことがあるが、基本的には外に出て作業をしていた。よくこの独立系SIerは”人売り商売”とか”IT土方”などど揶揄され否定的に表現されることがあるが、別にそうであっても決してデメリットばかりではない。このまま書き続けると収拾がつかなくなるので、この独立系SIerで働くことのメリット、デメリットを少し書いてみたいと思う。
メリット①(勤務時間がある程度しっかりしている)
昔はあったよ。5連続会社泊や30日連続勤務とか・・・。でも今はだいぶ少なくなった印象だ。特にフリーランスになって約5年になるが、この5年で徹夜や突発的な休日出勤なんてのは全くない。スケジュール的に少しタイトになったときに22時~23時ころまで働くことはたまにあるが、月間ベースで稼働が200時間を超過したことは1度もない。常駐先が大手ということもあるが、無謀なスケジュールの下でプロジェクト運営が行われることが少なくなったのが大きいと思う。(自分がスーパーSE・PGになったわけでは決してない)
メリット②(余計な雑用に付き合わされない)
これは、在籍している会社での”出世レースを無視”すればという条件が付くが、在籍している会社で発生する不毛な勉強会や社内での雑用(例えば社内システムの構築等)を避けることができる。これらの作業は基本的には社内に残っている人間が担当するので客先常駐で働いている人は回避できる傾向がある。但し、まれに客先常駐であっても声がかかることがある。その場合、それでもその要請を拒否すれば人事考課でマイナスポイントになるかもしれない。
メリット③(客先常駐の恩恵を同じように受けることができる)
一番身近に感じるのは社食を利用できることだろうか。都内の場合、外で食事すれば一食1,000円位は覚悟しなければならないが、社食がある現場だと500円くらいで済んでしまうことも多い。1回1回は大した額ではないが年単位で考えた場合、結構大きな差が出ると思う。あと、メーカー系大手SIerに勤務しているとパソコンや周辺機器が割安で購入できることがまれにある。自分は利用したことはないが、過去に半年前にでた”ちょい型落(カタオチ)パソコン”が市場価格の半値くらいで販売するというキャンペーンをやっていたことがある。
つぎはデメリット・・・
デメリット①(勤務の多様化はまずない)
最近は、リモートワークや週3日だけ勤務など様々な働き方があるが、SIerの場合、客先常駐がメインとなる為、まだまだこのような多様な働き方は認められていないことが多い。特に金融系の場合は、このような多様化は一番敬遠するのではないか。自分はフリーランスなので契約は月単位で稼働時間は140-180時間が基本になる、下限上限を超過した場合はそれぞれ事前に定められたルールに従って超過精算単価や控除精算単価が払われたり引かれたりする。何れにしろ、月の最低稼働時間が140時間の場合、週4日勤務でも満たすのは難しくなる。
デメリット②(スーツ着用は基本)
たまに、ビジネスカジュアルOKな現場もあるが、まだまだスーツ着用が基本の現場が多い。今いる現場も金曜のみ私服OKとなっているが、面倒なのでスーツで出社している。Web系はもっと緩いみたいだが、SIerとして客先常駐しているならスーツを着て業務を行うのが当たり前となっている。
昔いた、銀行系の大手SIerに客先常駐をしていた時、Yシャツは白のみなんていう変なルールがあった。さすがに今は、ここまでシビアではないと思うが・・・
デメリット③(スキルチェンジがしにくい)
何か特定の言語を習得したいと思っても、客先がヨソ者に配慮することはまずない。例えば、JAVAを独学で勉強して資格を取ったとしても、現場経験がないとなかなかJAVAの現場に入ることは難しい。このような場合は、自社内で上司や先輩社員に頼んでどうにか潜り込ませてもらうなど、ちょっと強引な対策が必要な場合が多い。自分がCOBOLのPG/SEからVBの経験を積むきっかけも同じだった。
デメリット④(給与は低い)
年次が低い頃は中小独立系SIerの場合、月給は20万円前半くらいじゃないかな。まぁ客先常駐となっても経験の浅い若僧にはそれほど多くの単価は支払わないのでしょうがないといえばしょうがない。
で、結局快適なわけで・・・
10~20年前は、とても”IT土方上等!”なんて言えなかった。給与は安い割に、長時間労働や会社での連泊や連続○○日勤務とか、まぁヒドイ現場は大手でも普通に存在した。でもここ数年、特にフリーランスに移行したここ5年でIT業界の労働環境は大分改善されたと思う。(特に大手は)
でも所属している会社が中小でも、客先常駐先が大手なら、これらのマシな労働環境の恩恵は受けられるわけで、ヨソ者の協力会社の人間だからといって、使い捨てよろしく、無茶苦茶な要求をされるということもない。
但し、快適だからといってその環境に浸かっていると、あっという間に3年、5年と経ってしまう。在籍している会社に一生いるつもりがないなら、その会社の使える部分は最大限に利用して(例としては前述したスキルチェンジの機会など)、適切なタイミングで転職するなり、フリーランスに転身するなどした方がいいだろう。
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