テレワーク鬱の話からの続きです。
”相手側から損害賠償請求を考慮している”と告げられ右往左往します。マジで・・・
前回記事はこちらです。
目次
契約形態について
IT系のフリーランスの場合、契約形態は主に2つある。それが、
・請負契約
・準委任契約
の2つだ。
自分はフリーランスになって以来、”準委任契約”しか経験していない。客先常駐のいわゆる”SES”の場合も大抵はこの準委任契約で業務に就くことが多いのではないか。今回はせっかくなのでこの2つの形態についてもう少し掘り下げて説明したいと思う。
業務委託契約の2つの形態
①.請負契約
一言でいうと、受注者が製造依頼されたモノを納品し発注者が検収し納得すれば報酬が支払われる方式。受注者は、基本的には製造作業を行うに際し”いつ”、”どこで”、”だれと”作業を行おうと干渉されることはない。IT業界でも、ホームページの作成やそれほど大きくない規模のシステムなら個人で請負契約を結ぶことがある。
でも、初心者はなるべく手を出さないほうが無難だと思っている。
②.準委任契約
1.履行遂行型
一般的なのは、時間の切り売りタイプ。月○○万円とか時給〇千円とか時間で報酬が決まるタイプ。そして基本的には場所も決まっていることが多い。受注者にとっての一番のメリットは成果物に対する責任が発生しないこと。(だからと言って”いい加減”に業務を遂行していいわけではない)
2.成果完成型
請負契約とちょっと似ているが、簡単に説明すると依頼された行為が達成されたら報酬が支払われるタイプ。請負契約との違いは、成果完成型の方は、依頼した行為が達成されれば報酬が支払われる。(請負契約のように成果物の納品まで問われているわけではない)
居ても立ってもいられず・・・
自分は契約書上は”業務委託(準委任契約)”となっていたので完全に時間の切り売りタイプの契約で、成果物の納品義務は存在しない。この時点ではまだ、何で損害賠償請求が発生するんだ?っていう状態だった。
但しいろいろ調べる内に、民法651条に引っかかるみたいだった。民法651条の内容は以下のとおり。
民法651条
第1項 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
第2項 当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
なんとなく理解できたので、自分なりにまとめてみると以下のとおり。
⇒
発注者と受注者(自分)はいつでも契約の解除ができる。但し、一方が不利な状況での解除の場合は損害を賠償しなければならない。さらに但しで、やむを得ない事由があれば損害賠償は免除される。
自分の中では、”やむを得ない事由”があるので大丈夫だと思っていた。ただ心療内科での”抑うつ状態”というのは充分な理由になるとは思ったが、静養期間はあくまで2週間だからそれ以降は復帰しなければならないということみたいだ。この場合、もう一度病院行って再度診断書を書いてもらえば大丈夫だったみたいだ。???
まぁどっちにしろ、損害賠償請求=裁判沙汰ということが脳裏をよぎった自分は、こっちも弁護士に相談する必要があると判断した。でもどうしたらよいかわからない。ググレカスして近所の弁護士事務所を探しまくったりしている内に、”弁護士ドットコム”なるサイトがあるのを発見した。
地理的に近い弁護士先生を探している内に初回相談は無料という先生が多いことに気付いた。そこで、徒歩や自転車圏内に事務所を構えている弁護士先生に早速相談してみることにした。
準委任契約でも損害賠償請求を受ける可能性がある
弁護士の初回無料相談の際、今回のようなケースの場合、損害賠償請求を受ける可能性というのは確かにあり得るという話だった。判例実績までは不明だったが、自分の今回のこのようなアクションから相手側が法的にも感情的にもこのような手段に訴えることは十分にあり得るとのことだった。但し話には続きがあり、以降の話を聞いていくらか安心できるようになった。以降の話というのは以下のとおりとなる。
”但し、実際に裁判で損害賠償請求をする場合、自分が離脱することによる喪失利益がどのくらいのものになるか算出しなければならないがこの算出は結構難しい。さらに今回自分が就業を続けることは医師の判断からも現実的でなかったという点を考慮すれば、実際には損害賠償請求をしてまで金銭的賠償を求める可能性はかなり低いんではないかと思う。”
はっきり言って、100%安心できたわけではないが、自分の中で増幅しながら渦巻いていた不安感は、この弁護士先生の話で大分和らいだことは確かだ。悩み事がある場合、自分一人で抱え込まず誰かに相談することがどれだけ大事かっていうのを思い知った。それと同時に、知識や理屈から現実的なシナリオを想定し不安を取り除く作業の重要さを痛感した。
結局どうなった?
その後、こちらが弁護士を用意して待ち構えているということを知った受注者側は、直接自分と話をしたいということになった。そして弁護士先生からは会話の内容は念の為録音しておくようにとのアドバイスをもらった上で話し合いに臨んだ。
そしてその話し合いについてだが、結局は結構あっけなく終わってしまった。なので詳細には書かないが、簡単に言えば、お互い法的処置は取らないという約束事を交わしたのみだった。
向こう側も、自分が”抑うつ状態”に陥ったことについては負い目を感じていたいみたいで、向こうは向こうで自分から訴えられることを心配していたみたいだった。
話し合い終了後、弁護士先生に内容を連携したが、弁護士先生も多分こうなることは予想していたみたいだった。裁判沙汰というのは個人はもちろん企業側もかなりのエネルギーを使うので、当事者同士が話をして一気に解決してしまうということも相当数あるみたいだ。
そういうことで人生で初めてとなるかと思われた裁判沙汰(損害賠償)は未遂で終わった。未遂で終わったが、この件は自分にとって非常に大きな経験だった。一番の反省点はフリーランスで活動していながら自分の身を守るという対策を全く取っていなかったことだろうか。
フリーランスが取るべき対応策
今回の一件があるまで、フリーランス向けのサービスを展開している組織や団体があることは知らなかった。本当はフリーランスに転身した最初に調べるべきことだったはずだが、とにかく知らなかった。人間は本当に痛い目に逢うまでは学習しない生き物なんだと痛感した。そして不安感から右往左往している最中にフリーランスにとってかなり有益だと思う団体があったのを発見した。今回全てのフリーランスにとって知っておくべき情報だと思ったので紹介したいと思う。それがフリーランス協会というものだ。リンクは以下のとおり。
フリーランスをやっている人なら知っている方も多いと思うが、ここに加入するとフリーランスが陥りやすいビジネスリスクを回避できるであろう保険が自動付帯される。さらにはトラブルに巻き込まれた際に発生する弁護士費用なんかも保証されているらしい。
それ以外にも、ケガ、病気などで稼働が不可能になった際の補償なんかもあるらしい。(こっちは任意)
まぁとにかく、業務遂行上何かあった際に”自分の財産で補う”というのは現実的ではないことが多いはずなのでこのような保険があるなら入っておけということだ。
最後に・・・
今回の記事のタイトルをちょっとキツ目にしたのは、直近のこのプロジェクトを離脱した数日後、営業から”先方から損害賠償請求を考慮している。”という連絡を受けた時に、精神的なダメージが非常に大きかったからだ。先方に具体的な話を聞くこともできず、ただただ最悪どのくらいの金銭的賠償が発生するのか?ということを考える日々が何日も続いたからだ。
営業からこの話を受けた時、本当にイロイロなことが脳裏をよぎった。
・このようなケースの場合の賠償額の相場っていくらなんだ?
・今、自分の財産はいくらあるのか?
・金融機関から最高でいくら借りることができるか?
・自己破産も検討しなきゃいけないのか?
・親の住んでる実家の名義ってまさか自分の名義になっていないよな?
・こっちはこっちで弁護士を用意した方がいいのか?
・裁判が長引いた場合、弁護士費用っていくらかかるんだ?
無知とは怖いもので、本当に最悪の状況を想定し不安・心配は無限に増幅していく。
もちろん、フリーランス協会に加入した段階で自動付帯される保険で100%安心できるとは限らないが、個人が企業相手に賠償できる額なんてたかが知れているこちを考えれば、絶対にこのような保険に加入することは必要だと思う。
会社員時代には良くも悪くも会社に属していることでこのようなトラブルからは距離を置くことができていたが、フリーランスの場合、自分の身は自分で守らなくてはならない。今回、テレワーク鬱にかかって一番実感したのはこのような意識だったと思う。
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