「正社員になる!」と正社員神話の狭間で・・・



「正社員になる!」と正社員神話の狭間で・・・

気になったCM

2018年6月頃、関東地方で流れていたCM。バイトルだったと思うけど2つのバージョンがあって、出演者はEXILEの岩田剛典さん。
一つ目は、土砂降りの中、「一緒に暮らそう」、「俺、正社員になる!」っていうバージョン。
もう一つは車の中、「母さん、心配かけてゴメン」「俺さ、好きになれそうな仕事見つけたんだ。正社員になる。」
どちらのバージョンも、ピント外れのダメ男っぷりが面白く、「何このCM?、何のパロディ?」っていうのが第一印象だったんだけど・・・

2つのバージョンに共通して出てくるフレーズが「正社員になる」だったんだけど、このCMが実際に制作されてオンエアされているってことは、まだ世の中に正社員神話ってのが蔓延しているんだなって思った。
そういえば、2~3年前にもAKB48のお嬢さん使って、似たようなCMが流れていたような・・・。そしてこのCMには2つの前提が存在する。

・1つ目のバージョンは、安定=正社員
・2つ目のバージョンは、安心=正社員

このCMが成立する背景には上の2つの式が世間一般に受け入れられている(信じられている)という前提が必要だが、正直、正社員は安泰って思っている社会人ってどのくらいいるんだろう?。
私が20代のナウいヤングだった頃、1997年11月に北海道拓殖銀行(通称:拓銀)と山一證券が経営破綻した。当時、山一情報システム(所在地は船橋市(最寄駅は南船橋):ザウス(ザウスも今はない)の隣)で働いていた自分は、メディアの車が何台か止まっている中、身を縮めるように社内に入っていったのを覚えている。茅場町の山一本社および各営業店は相当ひどい有様だったようだ。証券会社や営業店に行くことはなかったが、江口洋介主演の”しんがり”ってドラマを見ると、あの年の夏休みくらいからの出来事が鮮明に思い出され胸が痛くなる。そしてシステム部門(山一情報システム側)の地獄は翌年に始まるのだが、それはまたの機会に。話を戻すが、正社員が安泰って考え方は非常に危険だ。それを実感する場面はシステム開発の現場でよく目にする。

IT土方(どかた)を何年も経験して

フリーランスになってもう何年も経つ。フリーランスなので、仕事の取り方が少しユニークだ。まず登録しているエージェント会社の営業が自分のスキルと経験と希望を考慮し、仕事を持ってきてくれ、自分はその詳細を確認し、”あら~、いいじゃない♪” って思えば、面接を行い、合意に達するとその現場での勤務が確定する。

大体翌月の月初から勤務開始となるのだが、炎上しているプロジェクト、デスマーチプロジェクトの場合は、「明日から来てクレっ!」みたいなことも稀にある。そんな現場は、面接担当官の様子から大体察しがつく。相手側が焦っていて、単価が高く設定されている場合は、敢えて”バターン死の行進”に飛び込む場合もあるのだが、最近は危険を察知した段階で、こちらから断る場合が多い。
一つの現場での作業期間は様々で、短ければ3ヶ月、長ければ3年くらい同じ現場にいることになる。そして一緒に働く人達も様々だ。中小のソフトウェア開発会社の社員さん、自分と同じようなフリーランスの人、大元締めの大手ソフトウェア会社の重鎮、システム発注会社の情報システム部門の社員さん(現場では一番偉い!)・・・。大規模なプロジェクトになると参画する人数は、それこそ1,000人くらいになることもある。
※.開発の一部を外注していることも多いので実態はわからないことも多い。

自分は、プロジェクトの現場には、SE専門で入ることもあれば、SE兼PGで入ることもある。はたまた、SEをやりながら運用保守の立ち上げ準備を並行して行うこともある。そして、そして・・・、設計から製造、さらにテストに至る過程において、本当にもう様々なことが起こる。
一例をだすと・・・

【実話タイムズ(ホントです)】
・インフラの不具合?相性?、原因不明の熱暴走で何度もサーバがリブートォォォ。
・昨日作ったテストデータが夢・幻のように消滅。バックアップからの復旧作業で1日パ~。
・上流のサブシスの進捗遅れでテストが開始すらできないィィィ。
・一緒に働いていたA子ちゃんが来なくなっちゃったァァァ♪。
・バッチ担当の佐藤君がダストボックスで熟睡ィィィ。
・4日ぶりに帰宅した斎藤さんが、タッチアンドゴーで戻ってきたぁぁぁ。

ここで、優秀なPMが存在すれば、事態収拾の為の施策が早急に打たれるので、沈静化は早いが、PMが名ばかりPMでオロオロするばかりだと現場は少しづつ理性を失い、欲望渦巻く北斗の拳の世紀末の世界みたいな様相になってくる。当然、嫌気が指して辞めたい人間ばかりになるのだが、契約の節目(通常は3ヶ月毎に設定)までは原則耐えなければならない。一番偉いシステム発注会社の社員さんは、も~、涙目の脱糞、泡吹き悶絶状態。だって眼前では、水と油を奪い合うMadMax 怒りのデスロードの光景が広がっているんだから・・・。この段階では、テスト実施のためのサーバ占有で殺し合いが発生したりする。さらに、このあたりから、「夜中なら空いてるよね♡」みたいなNY時間で仕事をする人たちが出現し始める。カオスに突入だ。いやまだカオスの入り口か。カオスのど真ん中では家に帰れないから・・・。カオスの只中では、連泊する人たちが増殖する。もちろんその間、横になれる時間はあまりない。
そんなカオス(正しい発音はケィォス【kéɪɑs】←「どうでもいい」)の状態の時、唯一自分の味方になってくれる存在がある。何かというと・・・

それは、それまでに培ったスキルであり経験だ。その中でも特にスキルは大事だ。経験は現場の良し悪しや上司や同僚、相手先の人間に多少左右されることもあるが、スキルの有無については言い訳はできない。空いている時間に少しづつでも勉強しスキルアップを継続して行っている技術者は、このような修羅場でも生き残れる。本当に強い。そして、スキルの足りない人から、モヒカン頭の人たちからボーガンで撃たれ始めていく。
私の経験上、ダメダメな人は、特に30~40代の正社員の方に多く見られる。「正社員の俺様は勝ち組。一生安泰!」って思っているからなのか、あまりにスキル不足が目につく。どうしてこの現場に入れたのか不思議なほどだ。一応、管理系の作業で参画しているらしいが、はっきり言って邪魔でしかないのは、その人のいるシマの空気感ですぐにわかる。(年次の若い人ですら、こんなおじさんたちを嘲笑しているので・・・)
”自分のPCのIPアドレスがすぐに出せない。”なんてのはカワイイもんだ。ひどい人になると、Ctrl+C、Ctrl+Pすら知らない人もいる。費用対効果って何?って聞いている人もいた。ホントだ。そして、こういうダメダメな人たちの内の何人かはプロジェクトの終端(カットオーバー)まで粘れずにいなくなる。(現場変更or退職or失踪 机に菊花無し)現場の変更ならまだいいが、この状態で退職や失踪(後退職)はその人にとって相当悲惨だ。だって何もなくて、何もできないんだから・・・、全裸でライオンのいるサバンナに放り出されるようなもんだ。(笑)

冒頭のCMについて

冒頭のCMに戻ると、あのCMには、○○を身につけたい。○○になりたい。っていうのが全く見えてこないのが、CMを見て感じた違和感だと思う。だって職業選択(就職活動でもいいけど)の際、”やりたいこと”・”できるようになりたいこと”が最初に考えることでしょ?、
”正社員になる!”なんてフレーズ、例えば、知人・友人に本当に言えます? 「私は言えません。笑ってしまいます。ぷっ。」ってか、そんなこと言われても”?”(疑問符)しか残りません。たぶんこんなCMがまだ流されているからブラック企業ってなくならないんだなぁって思う。だってブラック企業の求人って、採用条件に”、情熱だけあればいいです!”や”人柄採用!”、なんて言い回しよく使うもんね。今でもあるね。こんなの。
最後に、正社員になることは簡単だ。自分で法人を立ち上げればいいんだから・・・。正社員どころか社長になれちゃう。(今は資本金の縛りとかないので本当にハードルは低い)。もちろんどうやって稼ぐかは別問題だが・・・

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です